『過保護』とHSCの育ちについて

過保護について

過保護や過干渉は、子どもにとっては抵抗不能である

“子どものためを思って” という名目で、

その子独自の成長のリズムや自立を促すペースに合わせることよりも、親(周りの大人の人たち)や家の都合・事情・理想が優先されながら、親(周りの大人の人たち)の都合による価値観や世間体を意識しすぎた常識の枠組みの中で、その子本来の欲求や自然に湧いた感情、そしてその子の主体性(自発的な意志・判断によってみずから責任をもって行動する力)が押し潰されていくというものです。

 

「先天的である気質」と「後天的な性格」とのギャップによる生きづらさ

子どもが生まれ持った先天的な気質と、親との関係(母親との関係は、すでに胎内にいる時から)や育つ環境・社会環境の中で培われていく後天的な性格があり、これがあまりにもギャップがありすぎると、子どもの欲求・感情・主体性が押し潰されて、生きづらさを抱えることになります。

例えば、多くの学校や組織社会は外向性を重視するという現実があります。それに加え、親までもが子どもに外向的な人間になることを期待しすぎると、子どもの本来の自己が否定され、親や社会が理想とする考え方を持った自己を“本当の自分”だと思い込みながら生きることになるのです。

 

HSC・HSP

HSC・HSPは、目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、徹底的に処理してから行動するという神経システムを生まれつき持っています。

 

一般的にHSC・HSPは「内気」「神経質」「心配性」「臆病」な子・人として捉えられがちなのですが、「内気」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、それは過去におけるストレスやトラウマ体験が影響しているものと考えられています。

 

またHSC・HSPは、外向性を重視する社会の中で、自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…「落着きがなくなる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすく、感受性が強すぎ、繊細すぎるために、学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすいのですが、周りの大人の人たちが、「ほかの子に遅れをとってはいけない」「おちこぼれてはいけない」「早く社会性を身につけて適応させなくては、自立させなくては」という考えに縛られていたら、その焦りが子どもさんに伝わって、期待に応えられない子どもさんは「どうして自分にはできないのだろう」、「どうして自分は他の子と違うのだろう」という思いが強まって、自己否定感や劣等感を抱えてしまいます。

 

人にはそれぞれ個性や独自性が存在し、それぞれに得手・不得手があります。

特にHSC・HSPは、細かいことに気がつき、過剰に刺激を受け止めるため、疲れやすく、慎重で状況をよく観察してから行動します。自分のペースで思索・行動することを好み、監視されたり、評価されたり、押しつけられたりすることを嫌います。また、新しいことや初対面の人、人の集まる場所や騒がしいところが苦手で、慣れた環境や状況が変わるのを嫌がる傾向が見られます。

このようなHSC・HSPの生得的な気質である「小さなことを気にする自分」「ちょっとしたことに敏感に反応する自分」「なかなか決断ができない、行動を起こすのに時間がかかる自分」を、もっとも大切な人から肯定的に受け止めてもらえるか否かで、自分の気質をポジティブに捉えていくか、ネガティブに捉えていくかということについての影響は大きいでしょう。

特に子どもさんの場合は、親御さんがその子の気質の特性を知って、気質に合わせた育て方を行っていくか否か、さらには、その子とともに、気質に合った生き方(教育や職業など)の選択を行っていくか否かは、その子にとっての、その後の生きやすさ、生きづらさにまで影響を及ぼしていくものと考えられるのです。

したがって、外向性を基準とする多数派の考え方・感じ方を強要されたり、「細かすぎ」「クヨクヨ考えすぎ」「そんなことだと世の中渡っていけないよ」などの言葉で、子どもの気質が否定されたりすることで子どもに悪影響が出ているのであれば、我が子を守ってあげられるのは、子どもの気質を肯定的に受け止め、その本質を理解している親しかいないということだと思います。

 

一方で、時代は変わり、家族の在り方や環境、子育ての仕方も、お母さん・お父さんの子どもの頃とはだいぶ違いが出てきています。それに伴って、前の時代の「当たり前」のことで、だんだん通用しなくなっていくはずのものが出てきていることも事実です。

「当たり前」を「当たり前」と思い続けて、それを守ろうとしてしまうことで、生きづらいと感じることが意外に多いのです。

その意味で、その子の気質やペースに合わせた子育てがもっとも重要で、その子に合わせるとは、その子らしさを育める家庭環境を整えることです。

また、教育や職業に関しても、学校や組織にこだわることなく、持って生まれた資質や個性が開花できるような、その子の身の丈(気質)に合った方法や環境を選択していくことが望まれます。

 

敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』、『敏感過ぎる自分に困っています』の著者である長沼睦雄先生(精神科医)はこれらの本の中で、『HSC・HSPの、自己の成長のために必要なこと』として以下の5つを挙げています。

 苦手なものとは物理的な距離を取る。

ネガティブなものを吐き出す。

自分を守るシールドをつくる。

こまめに休息を取る。

ひとりの時間を確保する。