幼稚園入園願書と調査票の「性格」と「園に対する希望」の欄に書いたこと【幼稚園入園をめぐる家族の物語⑥】

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初めてお読みになる方はこちらからどうぞ→第一話  来年から幼稚園』

 

前回までの内容

来年幼稚園の入園を控えた息子“たける”は、超がつく繊細で感受性の鋭い気質の持ち主。

「ママと離れては幼稚園に行きたくない」という強い意志を示すたけるにとって何が必要なのかを考えた。

そこで集団での活動に慣れるため保育園児との交流保育に参加するも、勢いに圧倒されるゲームに心が折れたたける。

交流保育終了後、ママ友から親子で1年間通園したというママの話を聞き、たけるに合った集団生活への移行の仕方が見出された。

 

 

“たける”のように、とても敏感で、繊細さや感受性の強さ・豊かさを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)と言います。

HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好みます。

これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。

またHSCは、「内気」とか「引っ込み思案」とか「神経質」とか「心配性」とか「臆病」などとネガティブな性格として捉えられがちなのですが、

「内気」「引っ込み思案」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、それは過去におけるストレスやトラウマ体験が影響しているものと考えられています。

ほぼ5人に1人は、HSCに該当すると言われ、HSC自体は病気や障がいではなく、とても敏感で感受性が強く、かつ繊細さを持った生得的な気質なのです。

(*HSCはアメリカのエレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です)  

 

HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴

※個人差があり、当てはまるものや、その強弱は、人によって異なります

また、HSC・HSPという敏感さと、HSS(High Sensation Seeking=刺激追究型)もしくはHNS(High Novelty Seeking=新奇追究型)という強い好奇心を併せ持っているタイプの子・人が存在しますが、ここではHSC・HSPの特徴について記し、HSS・HNSの特徴については触れていません。

①すぐにびっくりするなど、刺激に対して敏感である。細かいことに気がつく(些細な刺激や情報でも感知する) 

②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒されると、ふだんの力を発揮することができなかったり、人より早く疲労を感じてしまったりする。人の集まる場所や騒がしいところが苦手である。誰かの大声や、誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にしたりするだけでつらい。

③目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。そのため、行動するのに時間がかかったり、新しいことや初対面の人と関わることを躊躇したり、慣れた環境や状況が変わることを嫌がる傾向にある。急に予定が変わったときや突発的な出来事に対して混乱してしまいやすい。新しい刺激や変化を好まないのは、“刺激への馴れが生じにくいこと”の影響も大きい。

④人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。

⑤自分と他人との間を隔てる「境界」が薄いことが多く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。

⑥直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。モラルや秩序を大事にする。正義感が強い。不公平なことや、強要されることを嫌う。

⑦内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ。想像性・芸術性に優れている。クリエイティブ(創造的)な仕事に向いている。

⑧静かに遊ぶことを好む。1対1や少人数で話をするのを好む。自分が交流を深めたい相手を選び、その相手と同じことを共有し、深いところでつながって共感し合えるようなコミュニケーションを好む傾向にある。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。自分のペースで思索・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。観察されたり、評価されたり、急かされたり、競争させられたりすることを嫌う傾向にある。

⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかったりした場合に自信を失いやすい。

⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…HSCの場合「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすい。細かいことに気がついたり、些細な刺激にも敏感に反応したり、過剰に刺激や情報を受け止めたりするため、学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。 

 

入園願書

11月、町立幼稚園の園児募集の通知が届きました。

「いよいよ来たね」

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 封筒に入っていたのは

入園受付の案内

入園希望の方は入園願書などを記入し、必要書類を揃えて提出。

 

必要書類
  1. 認定申請書兼幼稚園入園申込書(願書)
  2. 家庭生活調査票
  3. 幼稚園就園時健康診断票(診断票を持って、近くの病院で受ける)
  4. 世帯の住民票謄本(1通)

  

  • 1の認定申請書兼幼稚園入園申込書(願書)は、住所や氏名、続柄、電話番号や職場などを書く単純なもの。
  • 3の健康診断はかかりつけの内科に行くとして、必要事項を記入していこう。 
  • 私たちにとって重要なのは、『2の家庭生活調査票』。生活状況や性格、園への希望などを書く項目が細かくたくさんあるのでじっくりすすめます。

 

家庭生活調査票への記入

こういう大事な書類はまず鉛筆で下書き・・・っと。

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そして夫婦で相互確認。

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それぞれの項目(該当する答えを〇で囲む) 

・食事(食欲、食事の様子、好きなもの、嫌いなもの、アレルギー、間食)

・排泄(大便、小便《ひとりでできるかどうか》、おねしょ)

・睡眠(起床就床の時間、誰と寝ているか、昼寝)

・言葉の様子(はっきりとした発音で話ができるかどうか)

・利き手

・友達は多いか少ないか

・遊ぶ場所

・好きな遊び

・お手伝い(させるかさせないか)

・衣服の着脱(自分でできるかどうか)

・話合い(家族とだけ話す・知っている人に話す・だれにでも進んで話す から選択)

 

 

ここからは文章を記入する項目です。

 

f:id:kokokaku:20171105143431j:plain「園に対する希望という項目があるから、たけるが慣れるまで親が付き添いたいということ、ここに書いておこうか」

 

そうしてふたりでその文章を練りました。

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「家庭で見た性格」の欄に書いたこと

良い点

感受性が強く繊細である。自分の気持ちに正直で、自分の意志で判断,決断する。

直したい点

特になし。

 

 「その他特記すること」の欄に書いたこと

親の指示で何かをやらせる、強いるといったことはあえてしないようにし、自発性や本人のペースを尊重しながら、子ども自身の主体性や独自性を育てることを大切にしている。

 

「園に対する希望」の欄に書いたこと

家庭(親)から離れることは初めてで、巣立つことにまだ恐怖心があるようです。私共親はこれを然るべき反応と受け止め、入園について本人と話し合った結果、無理に適応を促すことでトラウマをつくらないよう、入園当初は、本人の好奇心が恐怖心を上回り、自分の意志でひとり立ちの決心ができるまで、母親が付き添うことを望んでいます。

 

こうして、必要書類を揃え、12月に入って書類を提出しました。

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 親から離れることを子ども本人が納得して決めるその日まで

大人は仕事や環境を自分で選ぶことができるし、それで違うと思えば、その仕事や環境から離れるという選択も自分次第でできます。

 

だけど子どもは親から離れる時期やタイミング、方法を自分で決めることはできません。

 

世の中を知らないし、自分ひとりで生きることができないし、権利や意志を主張する言葉も持たないから。

 

子ども時代はやっぱり無力です。

 

結局、どんな子も親と離れることには慣れるしかないでしょうし、ほとんどの子は自分の居場所を見つけて集団生活に慣れるのは確かです。

 

しかし中には、親から離れることが恐怖体験、または、ストレスフルな体験となっていて、「慣れているように見えても、深刻なトラウマを抱えたり、心の中に問題が蓄積してしまう子」が必ずいるのです。

 

たけるはそういう気質の子。

だから「大丈夫、そのうち慣れるよ」とは簡単には言えません。

 

親と離れるタイミングは、本人が納得して決めて良い。

そうさせてほしい。

 

「好奇心が恐怖心を上回る日」、そして「親と一緒じゃなくても、園に行くのが毎日楽しいと思えるようになる日」、きっとその時がくる。

 

それが私たち家族のペースであり、親としての願いでもあったのです。

 

だからこそ、たけるにとって必要なことは何か、親として今できることは何かを、真剣になって考えていました。

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次回につづく・・・

(*この物語は、実話をもとにしていますが、個人名や団体名、エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)

(*次回第7話『説明会と面談。親子通園の許可をもらう』の予定です)

 

ー著書紹介ー

 

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