入園式(後編)~不安で泣き出しそうな子どもにママが取った行動とは?~【幼稚園入園をめぐる家族の物語⑬】

入園式が始まった。

 

直後、たけるが後ろを振り向いた。

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その顔はもう、いっぱいいっぱい。

 

たけるは無我夢中でみんなに合わせて入場したけど、本当はもう限界を超えていました。

このままだと泣き始める。

どうする?

 

「絶対守る!」と言った前日の決意が試された瞬間でした。

 

 

 

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前回の記事(「入園式当日のこと」前編は→こちら

初めてお読みになる方はこちらからどうぞ→第一話  来年から幼稚園』

 

この物語のここまでのあらすじ

息子“たける”は、超がつく繊細で感受性の鋭い気質の持ち主。

入園の半年ほど前から「ママが一緒でなくては幼稚園に行かない」と言う、たけるの気質に合った集団生活への移行方法を考えてきた。

そこで「慣れるまではママが園に付き添う」という方法を取らせてもらうことに。

入園が迫る3月、パパの生い立ちの中の心の傷がうずいたことがきっかけとなり、ママは、同じように傷つきやすくトラウマを負いやすい気質のたけると子どもの頃のパパを守る!と決意し、入園式へ。

頑張って入場を終え、園児席に着席したたけるだったが・・・。

     

“たける”のように、とても敏感で、繊細さや感受性の強さ・豊かさを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)と言います。

HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好みます。

これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。

またHSCは、「内気」とか「引っ込み思案」とか「神経質」とか「心配性」とか「臆病」などとネガティブな性格として捉えられがちなのですが、

「内気」「引っ込み思案」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、それは過去におけるストレスやトラウマ体験が影響しているものと考えられています。

ほぼ5人に1人は、HSCに該当すると言われ、HSC自体は病気や障がいではなく、とても敏感で感受性が強く、かつ繊細さを持った生得的な気質なのです。

(*HSCはアメリカのエイレン・N・アーロン博士が提唱した概念です) 

 

HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴

※個人差があり、当てはまるものや、その強弱は、人によって異なります

また、HSC・HSPという敏感さと、HSS(High Sensation Seeking=刺激追究型)もしくはHNS(High Novelty Seeking=新奇追究型)という強い好奇心を併せ持っているタイプの子・人が存在しますが、ここではHSC・HSPの特徴について記し、HSS・HNSの特徴については触れていません。

①すぐにびっくりするなど、刺激に対して敏感である。細かいことに気がつく(些細な刺激や情報でも感知する) 

②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒されると、ふだんの力を発揮することができなかったり、人より早く疲労を感じてしまったりする。人の集まる場所や騒がしいところが苦手である。誰かの大声や、誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にしたりするだけでつらい。

③目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。そのため、行動するのに時間がかかったり、新しいことや初対面の人と関わることを躊躇したり、慣れた環境や状況が変わることを嫌がる傾向にある。急に予定が変わったときや突発的な出来事に対して混乱してしまいやすい。新しい刺激や変化を好まないのは、“刺激への馴れが生じにくいこと”の影響も大きい。

④人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。

⑤自分と他人との間を隔てる「境界」が薄いことが多く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。

⑥直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。モラルや秩序を大事にする。正義感が強い。不公平なことや、強要されることを嫌う。

⑦内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ。想像性・芸術性に優れている。クリエイティブ(創造的)な仕事に向いている。

⑧静かに遊ぶことを好む。1対1や少人数で話をするのを好む。自分が交流を深めたい相手を選び、その相手と同じことを共有し、深いところでつながって共感し合えるようなコミュニケーションを好む傾向にある。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。自分のペースで思索・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。観察されたり、評価されたり、急かされたり、競争させられたりすることを嫌う傾向にある。

⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかったりした場合に自信を失いやすい。

⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…HSCの場合「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすい。細かいことに気がついたり、些細な刺激にも敏感に反応したり、過剰に刺激や情報を受け止めたりするため学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。  

  不安、怖い、泣きそう…

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その顔はもう、いっぱいいっぱい。

 

たけるは無我夢中でみんなに合わせて入場したけど、本当はもう限界を超えていました。

このままだと泣き始める。

 

 

私は反射的に(大丈夫!)って大きくうなづいた。

 

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いっぱいいっぱいで泣き出しそうな顔を見て、私、逆にホッとしてる。

 

こういう場では、絶対に自分より周りに軸を置いてきた私の軸は、今、紛れもなく“たける”にしかない。

 

たけるは入場の時は固まった表情で指示通り歩くのに必死だった。

精一杯頑張って、その分精一杯無理してた。

もうそれだけで十分だよ。初めてなのに、苦手なのに立派だよ。

 

今はたける、我慢せずに救いを求めてる。母親に。

それでいい。

それが自然なんだ。

我慢しなくていい。

 

だってこれは、たけるが自分で望んで選んだことじゃないんだから!

 

次の瞬間、私の体が動き出した。

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そしてスッとたけるの後ろにつき、背中をさすり続けた。

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入園式に親が子どもに寄り添い背中をさする・・・なんてあり得ないよね。

そう思ったけど、私は私で無我夢中。

 

守る

時々ふと気を緩めると、周りの目が気になる。

実際は誰も見ていないし、誰も何も思っていないかもしれない。

でも「甘やかしてる」「過保護」「あ~、それじゃいつまでも自立できないはず」といった声が頭に浮かんでくる。

その声は、私に植え付けられた世間体からくるものだろう。

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世間体を振り切って軸をたけると自分に戻して思った。

なんでそんなこと気にするの!?

この状況で子どもの背中をさすって安心させるのは変?

いや、変じゃない。

そんな親がひとりくらい、いたっていいさ!

私は守るって決めたんだ。

今のたけるにはこれが必要なの!!!

どう思われようと、それはたけるを感じてきた私にしかわからないんだから!!!!

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式の間中、私は背中をさすり続けた。

背中をさすっていても、たけるは時々辛そうな表情で振り向いた。 

 

f:id:kokokaku:20171104145840j:plain「次はチューリップを歌います。園児のみなさんは立ってください」

 

練習したチューリップ、たけるは誰よりも大きな声で一生懸命歌う。 

ここがたけるの不思議なところ。

どうしてもダメなこと・苦手なこと・大丈夫なこと・自信を持ってやり遂げたいこと・・・それがはっきりしていてわかりやすい。

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入園式は何とか終わった。

 

式の後、園生活に備えて、トイレの説明や着替えた服を畳む練習、お便り帳のやり方の練習もありました。

「たけるくん頑張ったね」

「先生、明日から私も付き添いさせてもらうこと、改めてよろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

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「ただいま~」

「お帰り!お疲れ様でした」

 

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「私、守ったよ。ちゃんと守れたと思う」

「たけるを見たらわかる。ありがとう」

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f:id:kokokaku:20171105202409j:plain「うん、入場の時、たけるはママから離れて頑張ったんだよ。だけどその後すぐ限界きて心が折れかけそうなのがわかったし、たけるも振り返ってママに助けを求めたの。頑張って耐えてほしいって気持ちもやっぱりあったけど、ここで無理させたらきっとトラウマになるだろうし、幼稚園嫌いになるでしょ。私、やっぱり周りが気になったけど、背中をさすり続けられて、本当に良かった。

私ね、たけるとパパが正直すぎるおかげで自分の殻をひとつ破れたような気がする!」

 

「ママ、本当にありがとう(涙)。

たけるも、よくがんばった。ほんとによくがんばったね」

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f:id:kokokaku:20171104145658j:plain「ねぇ、これ早く食べたい!」

f:id:kokokaku:20171104145323j:plain「あはは、紅白まんじゅうね。どうぞどうぞ」

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たけるは元気。

 

たけると、子どもの頃のパパを守るという決意から一心にとった行動は、人からどう思われるかという「恐怖の殻」を破る、私のためのチャレンジでもあったのでした。

 

明日から園生活が始まります。

 

 

次回につづく・・・

 (*この物語は、実話をもとにしていますが、個人名や団体名、エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)

 (*次回第14話は『寝る前に読み聞かせした「からすのぼうや」』の予定です)

 

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本当の私(ママ)になるために。~

というキャッチコピーの本、『ママ、怒らないで。』を出版しています。

ママ、怒らないで。不機嫌なしつけの連鎖がおよぼす病

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