入園後の慣らし期間はこんなふうに変化した【幼稚園入園をめぐる家族の物語⑱】

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前回までの内容

息子“たける”は、超がつく繊細で感受性の鋭い気質の持ち主。

入園の半年ほど前から「ママが一緒でなくては幼稚園に行かない」と言うたけるの気質に合った集団生活への移行方法を考えてきた。

そこで「慣れるまでは母親が園に付き添う」という方法を取らせてもらうことに。

 入園式を終え初登園したたけるの、何度もママのところに来る、その他課題が見えたところでママは先生や園長先生と面談をした。

 

“たける”のように、とても敏感で、繊細さや感受性の強さ・豊かさを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)と言います。

HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好みます。

これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。

またHSCは、「内気」とか「引っ込み思案」とか「神経質」とか「心配性」とか「臆病」などとネガティブな性格として捉えられがちなのですが、

「内気」「引っ込み思案」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、それは過去におけるストレスやトラウマ体験が影響しているものと考えられています。

ほぼ5人に1人は、HSCに該当すると言われ、HSC自体は病気や障がいではなく、とても敏感で感受性が強く、かつ繊細さを持った生得的な気質なのです。

(*HSCはアメリカのエレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です)

 

HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴

※個人差があり、当てはまるものや、その強弱は、人によって異なります

また、HSC・HSPという敏感さと、HSS(High Sensation Seeking=刺激追究型)もしくはHNS(High Novelty Seeking=新奇追究型)という強い好奇心を併せ持っているタイプの子・人が存在しますが、ここではHSC・HSPの特徴について記し、HSS・HNSの特徴については触れていません。

①すぐにびっくりするなど、刺激に対して敏感である。細かいことに気がつく(些細な刺激や情報でも感知する) 

②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒されると、ふだんの力を発揮することができなかったり、人より早く疲労を感じてしまったりする。人の集まる場所や騒がしいところが苦手である。誰かの大声や、誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にしたりするだけでつらい。

③目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。そのため、行動するのに時間がかかったり、新しいことや初対面の人と関わることを躊躇したり、慣れた環境や状況が変わることを嫌がる傾向にある。急に予定が変わったときや突発的な出来事に対して混乱してしまいやすい。新しい刺激や変化を好まないのは、“刺激への馴れが生じにくいこと”の影響も大きい。

④人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。

⑤自分と他人との間を隔てる「境界」が薄いことが多く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。

⑥直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。モラルや秩序を大事にする。正義感が強い。不公平なことや、強要されることを嫌う。

⑦内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ。想像性・芸術性に優れている。クリエイティブ(創造的)な仕事に向いている。

⑧静かに遊ぶことを好む。集団より一人や少人数を好む。1対1や少人数で話をするのを好む。自分が交流を深めたい相手を選び、その相手と同じことを共有し、深いところでつながって共感し合えるようなコミュニケーションを好む傾向にある。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。自分のペースで思索・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。観察されたり、評価されたり、急かされたり、競争させられたりすることを嫌う傾向にある。

⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかったりした場合に自信を失いやすい。

⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…HSCの場合「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすい。細かいことに気がついたり、些細な刺激にも敏感に反応したり、過剰に刺激や情報を受け止めたりするため学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。  

 

 慣らし期間の変化

初日と2日目、たけるはママのところに何度もきました。

慣れない環境や人に圧倒されるから。

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その後先生や園長先生との面談を終えると、

ママの遠慮が減ったからか、

たける自身が安心感を得られたからか、

翌日からすぐに変化が見られました。

 

わからないことを自分で先生に聞く

 わからないことはママに聞き、それをママが先生に聞いていましたが、突然壁がなくなったかのように率先して自分で先生に聞くように!

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お友達とのコミュニケーション

お友達との関わりも同じで、コミュニケーションがママ経由だったのが、自分で話しかけてみるコミュニケーションに変わっていきました。

そしてそれは自信になっているようです。

前日までは「自分で聞いてみたら?」と言っても応じなかったのだから大きな変化です。

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他にも、それからの1週間はこんなかんじで変化していきました。

 

 体育座りで先生の話を聞くのが苦手で泣きそうになる件 

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注意点

HSCの特徴②より:過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒され、人より早く疲労を感じてしまう。新しいことや初対面の人、人の集まる場所や騒がしいところが苦手。

↓ 

対応

圧倒され泣きそうになったらママのところに行ってもいい、ママが違う場所で膝にのせて充電してくれる、という安心の基地を準備した。

変化

初登園の日は頻繁に、2日目は少し減少、先生と面談した翌日の3日目はもうすっかり大丈夫になって、先生の声に素早く反応し、ビシッと姿勢を正してしっかり先生を見て話しを聞くように。

HSCの特徴⑥:モラルや秩序を重視する。

 

複数のお友達と関わることが苦手で泣きそうになる件

注意点

HSCの特徴②より:過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒され、人より早く疲労を感じてしまう。新しいことや初対面の人、人の集まる場所や騒がしいところが苦手。

対応

圧倒され泣きそうになったらママのところに行ってもいい、ママが違う場所で膝にのせて充電してくれる、という安心の基地を準備した。

また、お友達との関わりにヘルプを求められたら応じた。

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変化

たけるは相手としっかり意思疎通できるコミュニケーションでないと安心できないタイプなのでひとりとお話して安心し、またひとり、と慣れていく。

複数になると疲れはするが、圧倒され泣きそうになることはなくなった。

HSCの特徴③:人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。

HSCの特徴⑧:静かに遊ぶことを好む。集団より一人や少人数を好む。1対1や少人数で話をするほうがラク。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。

 

チャレンジの件

チャレンジ内容

母親のところにくる回数を、

5回まで→4回まで→3回までと減らしていく。

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変化 

結果は、「5回まで」にチャレンジした日(3日目)には「集合」が平気になったので、不安でママを求めて来るということがなくなってクリア。

着替えの時以外は嬉しいことを報告しにくるのがほとんどとなった。   

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嬉しい変化です。

とっても敏感で繊細な子がどんなふうに集団生活に馴染んでいくのか。

その際にどのような点に注目してサポートしてあげられたら安心か。

百聞は一見に如かず。

間近で観て感じ取ることで、後に知るHSCの気質に合った子育てを体得していっていたのだな、と思います。

 

 慣らし保育は1週間。

土日休んだら、週明けからは給食が始まり、降園が14時に変わります。

 

次回につづく・・・

 (*この物語は、実話をもとにしていますが、個人名や団体名、エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)

 

 参考

*HSCにとって学校生活は負担が大きく、園や学校への「適応」は簡単ではありません。例えば、新しいことや初めての場所、人が集まる場所や騒がしいところが苦手だったり、予想外のことや変化を嫌がる傾向にあります。そのために学校生活は不安でいっぱいで、とてもつらいものと感じられることが多く、HSCにとって新しい世界、特に園や学校という世界に入っていくのは、茨の道を歩いていくことを意味すると言われているくらいです。

また、物事を始めたり、人の輪に加わったりするなど、行動を起こすのにも時間がかかります。これは細かいことをじっくりと観察し、情報を深く処理(大丈夫かどうか確認)してから行動するためです。

その他、ちょっとしたことを気にしたり、刺激を受けすぎて圧倒されたりすると、落着きがなくなったり、言うことを聞けなくなったり、物事がうまくできなかったりします恥ずかしさや刺激が多すぎて不安を感じる状況や環境では、冷静さや自制心を失って、その子が持っている本来の力が発揮できなくなるのです。

その気質や特性への認識が共有され、慣れるまでのそれぞれに合ったやり方やペースが尊重されると安心ですが、そうでない場合、自己否定感や劣等感、トラウマを抱えやすいのです。

特に幼い頃に母親から無理に引き離された経験は、HSCにとってトラウマになる(強い不安となって残る)傾向があるのです。

 

アーロン博士は、2015年に日本において翻訳出版された著書『ひといちばん敏感な子』(エレイン・N・アーロン/著、明橋大二/訳 一万年堂出版)の中で、次のような言葉で、HSCを持つ私たち親を勇気づけてくれています。

HSCを育てるのは大きな喜びです。確かに、自分の子どもが『他の子と違う』ことには複雑な気持ちになるかもしれません。でも『他とは違う子の親になるなら、他とは違う親になる覚悟が必要です』。これがモットーであり、私の座右の銘です」と

 

ー著書紹介ー

 

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