こんばんは、kokokakuです。
先日、息子(たける)がご近所のお宅の玄関先で大泣きしました。
子どもが泣くのは普通のこと、
なのですが、たけるは8歳。
8歳の男の子が、こんなことで大泣きするとは、普通はきっと誰も想像できないような場面だと思います。
でもそれはHSC(Highly Sensitive Child) である、たけるならではの反応。
この出来事によって考えたこと、対応についてお話したいと思います。
人見知り?怖い?
1か月ほど前、こんなことがありました。
「こんばんは~、ごちそう様でした」
だいぶあたりが暗くなってきた頃、おすそ分けをいただいたおかずを入れた器をお返ししに、ご近所さん(Kさん)宅へ伺った時のことです。
「美味しかったです」
「良かった~。あ、そうだ、たけるくん、みかんがあるからちょっと待ってね」
Kさんがそうおっしゃった直後、Kさん宅に女性らしき人影が近づいてくるのに気が付きました。
「あら!」
「あら、お久しぶりです」
面識のある方(Nさん)でした。
Nさんの視線はすぐにたけるに。
たけるはササっと私の後ろに身を隠しました。
何だかとっても怯えたようす。
滅多に会わないNさんは、たけるの成長ぶりに驚いて、視線がたけるに釘付けのまま両手を伸ばし、
「たけるくん?大きくなったね~~」
と接近してこられました。
たけるは私の腰にしがみついてちょっとパニック。
「どうしたどうした」
思いがけないたけるの様子に私もびっくり。
でもNさんはきっと、そんな8歳は見たことないから、
たけるに向かって手を伸ばしてもっと接近されます。
次の瞬間、たけるは耐えきれず、大きな声で泣き始めました。
HSCは、不意や想定外のことがとっても苦手なのと、特に最近のたけるは
よほど慣れた人以外から“触れられる”ことがものすごく苦手なのです。
これはスーパーで、知らないおじさんにほっぺをプニプニされたことをきっかけにして、成長とともに強く出てきた反応です。
恐らくフラッシュバック。
(その時のことが書いてある記事があります↓)
とはいえ、今回は私も想定外すぎて混乱気味になってしまいました。
だって、大泣きのたけるはすぐにでも家に戻りたくて必死。
だから、どうしてたけるが大泣きし始めたのか、相手に説明もできない。
その時、私は手にしていた1枚の紙をKさんに渡しました。
その紙とは、夫がブログでまとめていた記事のコピーでした。
以下引用掲載します。
HSC・HSPについて
とても敏感で、繊細さや感受性の強さ・豊かさを生まれ持つ気質の子・人のことを、
HSC(Highly Sensitive Child)・HSP(Highly Sensitive Person)と言います。
HSC・HSPは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好みます。
これはその子・人の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。
またHSC・HSPは、「内気」とか「引っ込み思案」とか「神経質」とか「心配性」とか「臆病」などとネガティブな性格として捉えられがちなのですが、
「内気」「引っ込み思案」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、それは過去におけるストレスやトラウマ体験が影響しているものと考えられています。
ほぼ5人に1人は、HSC・HSPに該当すると言われ、HSC・HSP自体は病気や障がいではなく、とても敏感で感受性が強く、かつ繊細さを持った生得的な気質なのです。
(*HSC・HSPはアメリカのエイレン・N・アーロン博士が提唱した概念です)
HSC・HSPの特徴
※個人差があり、当てはまるものや、その強弱は、人によって異なります。
また、HSC・HSPという敏感さと、HSS(High Sensation Seeking=刺激追究型)もしくはHNS(High Novelty Seeking=新奇追究型)という強い好奇心を併せ持っているタイプの子・人が存在しますが、ここではHSC・HSPの特徴について記し、HSS・HNSの特徴については触れていません。
①すぐにびっくりするなど、刺激に対して敏感である。
細かいことに気がつく(些細な刺激や情報でも感知する)。
②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒されると、ふだんの力を発揮することができなかったり、人より早く疲労を感じてしまったりする。
人の集まる場所や騒がしいところが苦手である。
誰かの大声や、誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にしたりするだけでつらい。
③目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。
そのため、行動するのに時間がかかったり、新しいことや初対面の人と関わることを躊躇したり、慣れた環境や状況が変わることを嫌がる傾向にある。
急に予定が変わったときや突発的な出来事に対して混乱してしまいやすい。
④人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。
細かな配慮ができる。
⑤自分と他人との間を隔てる「境界」が薄いことが多く、他人の影響を受けやすい。
他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。
⑥直感力に優れている。
漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。
先のことまでわかってしまうことがある。
直観力がある。物事の本質を見抜く力がある。
物事を深く考える傾向にある。思慮深い。
モラルや秩序を大事にする。正義感が強い。
不公平なことや、強要されることを嫌う。
⑦内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ。
想像性・芸術性に優れている。
クリエイティブ(創造的)な仕事に向いている。
⑧静かに遊ぶことを好む。
1対1や少人数で話をするのを好む。
自分が交流を深めたい相手を選び、その相手と同じことを共有し、深いところでつながって共感し合えるようなコミュニケーションを好む傾向にある。
大人数の前や中では、力が発揮されにくい。
自分のペースで思索・行動することを好む。
自分のペースでできた方がうまくいく。
観察されたり、評価されたり、急かされたり、競争させられたりすることを嫌う傾向にある。
⑨自己肯定感が育ちにくい。
外向性を重要視する学校や社会の中で、求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまくいかなかったりした場合に自信を失いやすい。
⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…HSCの場合「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすい。
細かいことに気がついたり、些細な刺激にも敏感に反応したり、過剰に刺激や情報を受け止めたりするため、学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。
人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。
この時、偶然にもこの紙を持っていたのにはこんな理由がありました。
昼間のこと
その日のお昼、Kさんがおすそ分けをくださったのは、実は、同じHSCの小さなお子さん(Yちゃん)を預かって、たけると3人で遊んでいた時だったのです。
「たけるく~ん」
Kさんの声が届いた瞬間、たけるとYちゃんは固まりました。
Yちゃんの視界はたちまち狭くなり、ただただ家の方に戻ろうとします。
面識のあるたけるさえも動こうとしません。
頑なに。
どうしようもないので大きな声で
「すみませ~ん、今ちょっといけませ~ん」
するとKさんは、おすそ分けを持ってきて下さいました。
「人見知りが激しくて固まっちゃうから動けなくって。器は後でお返しします」
Kさんは不思議そうな表情。
そんなやりとりがあったので、この際【HSCの特徴】をまとめた記事をお渡ししておこう、ということで持っていっていたのです。
家に戻っての話合い
とにかく記事のコピーを渡したので、たけるの大泣きの理由は察してもらえるだろうから良かった。
そう思う一方で、へこむ私がいました。
私たちの様子を見て、夫はすぐに何かあったことを察知します。
「何かあったの?」
私は事の次第を話した後、こう言いました。
「なんか落ち込む。
だって相手は悪気も何にも無いんだよ。
むしろ好意の表現ってわかってるのにたけるは大泣き。
何か申し訳ないし、でもたけるだって悪くない。
誰も悪くないのにこうなってしまうのはつらい。
誰も悪くないのに。
どうしてだろう、たける、以前よりますます敏感になってない?
まるで自分の子育てが間違ってるって示されてる気さえしてきてしまう」
HSC気質への対応については慣れているはずでしたが、
この時は冷静さを欠いてしまったようでした。
相手の方の好意を気持ちよく受け取れないことが残念だったのです。
HSCの対応で戸惑うのは、ほとんどが第3者と関わる時なのですよね。
私はその後夫の回答を待たず、今度はたけると話をしました。
「何がそんなに嫌だったのかな?」
「わかんない。嫌だった」
「たけるは本当に触られるのが嫌なんだよね・・・」
「スーパーで触られたのがトラウマになってる」
「だね。たけるにとっては電車で痴漢されるのと同じくらい嫌なのかもね」
「それより嫌!」
「あぁ、そうなんだね」
「これは他の人にはわからないよ」
「そっか。『触らないでほしい』って自分で言えたらいいけど、難しいよなぁ」
「パニックになるから言えない」
「うん。じゃあ、次こういうことがあったらママにどうしてほしいとかってある?」
「・・・」
「『触れられるのが苦手なので、泣きますよ』ってママが言う?」
「それ言っても相手が触ろうとしたら泣く」
「え?どっちにしても泣くんだ」
「泣く」
「人前で泣くの嫌じゃない?」
「嫌じゃない」
その時、私、吹っ切れました。
『泣いたら相手に悪い』『だからできるだけ泣かせちゃいけない』
って考えがまだ自分の中にあったことに気づいてびっくり。
何歳だろうと、
『泣いていい』『泣くのが良い』『泣くしかない』
相手の方にとってはたとえ好意だとしても、相手のために “どうしても嫌”、という気持ちを犠牲にしてまで我慢しなくていい。
相手は “触れたい”、でもたけるは “絶対に触れられたくない”。
それだけだから。
そもそも今は8さいで、身長や顔立ちからどうしてもまだ子ども扱いされるけれど、高学年になって身長も伸びたら、今までみたいに触れてくる人はいなくなる。
それまでの数年は、とにかく嫌な時は泣く!
言葉で意思表示できたらいいけど、できない時は泣く!
それがたける流。
わが子が人前で『大泣き』することへの覚悟ができてすっごく楽になったのでした。
さて、今度は夫と話します。
「あのね、たけるはこういう時、ママが守っても泣くんだって」
「うん。
俺たちがHSCやHSPに詳しくなってその気質を受け入れてる分、たけるはストレートに反応を出せるんだよ。
そうじゃなきゃ出せないし、出してもそれを否定された、拒絶されたと感じたら、自分の反応にひとつひとつに罪悪感や自己否定感を抱いてしまう。
HSCに対する親の理解がないと、HSCはそれほど生きづらい。
それにさ、こういう時にたける本人が相手に怒ったら『何?この子』ってなるよね」
「そう。かわいくないって、損するよね。大事な意思表示だとしても、この子がおかしい、ってなる」
「泣くことは、表現力をまだ持たない子にとっての一番有効な“自分を守る”手段なんだよね」
「そりゃそうだ。私もあんなに大泣きされたらひとまずその場を離れるしかないもんね。今のたけるにとって、『泣く』のは精一杯の手段なんだよね」
HSCの親として
「ある程度の年齢になって、
『自分は突然の出来事や状況の変化についていけないところがあって混乱してしまいやすんです』
といった表現力とか、自己主張力とかが身についていたらいいのだけど、それが言えないのだったら、“嫌だった、怖かった”という感情を泣くことで解放させた方がいい。
“嫌だったね、怖かったね”って、たけるの気持ちを後で受け止めてあげていたけど、それがとても大事。
閉じ込めるのが一番良くない」
「そうだね」
「それと、その時にネガティブな感情が外に吐き出されずに押し込まれてしまうと、“恐怖”という記憶のトラウマとして残ってしまう。
次にまた同じような場面に遭遇すると、“フラッシュバック”して、結局その時の恐怖が蘇ってきてしまう。
ストレスが強すぎると、ボーっとするなど意識を飛ばして(解離して)身を守ろうとしまうことだって起こり得る。
そういう意味でも、“ちゃんと泣ける子に育てる”ということが大事なんだ」
「そうだそうだ」
「プリント渡したんでしょ?」
「うん。『スミマセン!ここにたけるやYちゃんのことが書いてあります。
これ読んでもらったらたけるがこうなってる理由がわかると思いますので!!
スミマセン、失礼します!!』ってとにかく伝えて渡したの」
「それが一番いいよ。HSCを認知してもらっておけば次から話が通じやすい」
HSCに限ったことではありませんが、子どもの反応を見て、親がそれを否定したり、失望したりすると、無力な子どもは傷ついたり、自己否定感を抱えたりしてしまいます。
繊細で傷つきやすいHSCなら、なおさら。
できるだけそうならずに子どものそのままを受け入れるためにできるのは、ちゃんとHSCに寄り添った考えや解決策を話し合えること。
それと自分たち親子が関わる第3者に、HSCを認知してもらうこと。
今回の出来事で、改めてそれを実感しました。
というわけで、今後は【HSCの特徴】が書かれた記事のコピーを携帯し、いつでも渡せるようにしておく。
これが、HSCに安心・安全感を与え、親子の信頼関係を強められる、ひとつの対応策です。
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【HSC・HSPの特徴】疲れやすい、傷つきやすい、人づき合いが苦手? - あの日のボクへ
さいごまでお読みくださりありがとうございました。
ー追記ー
その後2018年7月に小冊子絵本「敏感な子の守りかた絵本」を制作しました。
表紙の絵はこの時のイラストがヒントになっています。