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初めてお読みになる方はこちらからどうぞ→『第一話 来年から幼稚園』
前回までの内容
幼稚園の入園を控えた息子“たける”は、超がつく繊細で感受性の鋭い気質の持ち主。
9月以降、少しずつ入園への意識が高まり準備を始めたが、たけるは「ママが一緒でなくては幼稚園に行かない」と言う。
たけるの気質に合った集団生活への移行方法とは?と考えて導き出されたのは、慣れるまで親が付き添うこと。
11月、園児募集のお知らせが届き、願書と同封の「家庭生活調査票」にその旨希望を記入して提出した。
“たける”のように、とても敏感で、繊細さや感受性の強さ・豊かさを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)と言います。
HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好みます。
これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。
またHSCは、「内気」とか「引っ込み思案」とか「神経質」とか「心配性」とか「臆病」などとネガティブな性格として捉えられがちなのですが、
「内気」「引っ込み思案」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、それは過去におけるストレスやトラウマ体験が影響しているものと考えられています。
ほぼ5人に1人は、HSCに該当すると言われ、HSC自体は病気や障がいではなく、とても敏感で感受性が強く、かつ繊細さを持った生得的な気質なのです。
(*HSCはアメリカのエレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です)
HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴
※個人差があり、当てはまるものや、その強弱は、人によって異なります。
また、HSC・HSPという敏感さと、HSS(High Sensation Seeking=刺激追究型)もしくはHNS(High Novelty Seeking=新奇追究型)という強い好奇心を併せ持っているタイプの子・人が存在しますが、ここではHSC・HSPの特徴について記し、HSS・HNSの特徴については触れていません。
①すぐにびっくりするなど、刺激に対して敏感である。細かいことに気がつく(些細な刺激や情報でも感知する)。
②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒されると、ふだんの力を発揮することができなかったり、人より早く疲労を感じてしまったりする。人の集まる場所や騒がしいところが苦手である。誰かの大声や、誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にしたりするだけでつらい。
③目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。そのため、行動するのに時間がかかったり、新しいことや初対面の人と関わることを躊躇したり、慣れた環境や状況が変わることを嫌がる傾向にある。急に予定が変わったときや突発的な出来事に対して混乱してしまいやすい。新しい刺激や変化を好まないのは、“刺激への馴れが生じにくいこと”の影響も大きい。
④人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。
⑤自分と他人との間を隔てる「境界」がが薄いことが多く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。
⑥直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。モラルや秩序を大事にする。正義感が強い。不公平なことや、強要されることを嫌う。
⑦内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ。想像性・芸術性に優れている。クリエイティブ(創造的)な仕事に向いている。
⑧静かに遊ぶことを好む。1対1や少人数で話をするのを好む。自分が交流を深めたい相手を選び、その相手と同じことを共有し、深いところでつながって共感し合えるようなコミュニケーションを好む傾向にある。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。自分のペースで思索・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。観察されたり、評価されたり、急かされたり、競争させられたりすることを嫌う傾向にある。
⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかったりした場合に自信を失いやすい。
⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…HSCの場合「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすい。細かいことに気がついたり、些細な刺激にも敏感に反応したり、過剰に刺激や情報を受け止めたりするため、学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。
入園説明会の案内が届く
年が明け、入園説明会の案内が届きました。
入園前の心得についても説明があるのか・・・。
入園説明会へ
「わぁ、思ったよりたくさんいるね」
もっと少ないと思っていた入園予定の子は、10名近くいました。
「それでは、説明会をはじめます。最初は園長あいさつです」
園長は隣接する小学校の校長先生が兼任。優しそうな方で良かった。
(*沖縄の公立幼稚園の多くは小学校と幼稚園が同じ敷地内にあり、校長先生が園長を兼任しています)
入園前の心得
「次は入園の心得についてです。
お手元のしおりをご覧下さい。
幼児期は遊びながら学んでいく時期。
集団生活を経験する中で、園での生活や遊びを通して、基本的な生活習慣や社会性を身につけ、社会人として生きる力を培っていきます。
また、小学校以降の生活や学習の基盤を育成する場でもあり、学習意欲の基盤となる好奇心を育成します。
入園にそなえて、お子様がのびのびと楽しく幼稚園生活が過ごせるように、入園までに一人で身の回りのことができるようにしましょう。
これは、必ずして下さい、というわけではありません。
“できるだけ”で大丈夫ですのでよろしくお願いします」
(“できるだけ”でいいのね、良かった)
入園前の過ごし方やしつけの内容
園生活への期待感を
友達と一緒に、集団で遊ぶことなど、園での生活の話をしてあげ、園への期待感を少しずつ持たせるようにする・・・それはかなり心掛けている
早寝、早起き、朝ご飯の習慣
朝ご飯はねぇ・・・あまり食べないんだよね、たけるは。
トイレ
排便後の始末が自分でできるように。か・・・まだ最後は『ママ拭いて』って言うし、うんちの時なぜか全部服脱ぐし、今でも『トイレについてきて』って言うくらいだから、トイレは要相談だな
着脱がひとりでできるように
これは問題なし。
自分のことは自分でできるように
洗面、歯磨き、片付け、手洗い・うがい・・・これはまぁ大丈夫でしょう。
むむっ!身体や髪を洗うことができるようにしましょう・・・なぜ?。
自分で髪を洗うのは程遠いはず。
たけるの気質上、これはできる日がくるまで待とう。
片付けの習慣
うちでは無理強いしないけど、たけるは幼稚園みたいなところではちゃんとするんじゃないかな
あいさつ
うちでは普通にやってるけど、基本的に無理強いしないので、『こんにちは』と言われても相手や場によって返さない時がある。そのことを先生に伝えよう・・・。
きっと幼稚園に慣れれば大丈夫だと思う。
食事
好き嫌い…たくさんある。
箸を使って食べるように…プーさんのエジソンのお箸がお気に入りで、お箸の練習は嫌がるからなぁ。まぁ、“できれば”でいいってことだし、できなくてもいいや。
面談
説明会のあと、面談が行われました。
「斎藤たけるくん」
「はい。順番きたね」
「こんにちは、お名前言えますか?」
「さいとう たける」
「何歳ですか?」
「5さい」
「わぁ、素晴らしいですね」
(たけるって不思議。小さい頃から、こういう場所ではしっかり受け答えするんだよな・・・。)
面談担当の先生の手元には願書と一緒に提出した家庭生活調査票があります。
一通りのお話や確認が終わったあと、尋ねてみました。
「あの、ここにも書いているのですが、たけるは親元を離れたことがなくて、新しい園生活に不安を感じていて。本人と話し合って、できれば慣れるまで私も付き添って幼稚園に滞在させてもらいたいと考えているのですが、そのようなことは可能でしょうか」
「はい、その件については拝読してます。大丈夫だと思いますよ。担当になる先生にも伝えておきますね」
「よかったです、よろしくお願いしたします」
よかった・・・。
「慣れるまでママと一緒、大丈夫みたい!良かったね!」
「うん!」
次回につづく・・・
(*この物語は、実話をもとにしていますが、個人が特定されることのないよう、個人名や団体名・エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)
(*次回第8話『あるママが支援センターで不安になったこと~入園準備と過ごし方としつけ~』の予定です)
ー著書紹介ー
知らぬ間に受け継いだ「生きづらさの種」を取り除き、
本当の自分を取り戻す「読む子育てセラピー」本
『ママ、怒らないで。』を出版しています。