さようなら、幼稚園。そして自由になった!【幼稚園入園をめぐる家族の物語(最終回)】

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初めてお読みになる方はこちらからどうぞ→第一話  来年から幼稚園』

 

【HSCについて】

息子“たける”のように、とても敏感で、繊細さや感受性の強さ・豊かさを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)と言います。

HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好みます。

これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。

またHSCは、「内気」とか「引っ込み思案」とか「神経質」とか「心配性」とか「臆病」などとネガティブな性格として捉えられがちなのですが、

「内気」「引っ込み思案」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、それは過去におけるストレスやトラウマ体験が影響しているものと考えられています。

はぼ5人に1人は、HSCに該当すると言われ、HSC自体は病気や障がいではなく、とても敏感で感受性が強く、かつ繊細さを持った生得的な気質なのです。

(*HSCはアメリカのエイレン・N・アーロン博士が提唱した概念です)

 

HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴

※個人差があり、当てはまるものや、その強弱は、人によって異なります

また、HSC・HSPという敏感さと、HSS(High Sensation Seeking=刺激追究型)もしくはHNS(High Novelty Seeking=新奇追究型)という強い好奇心を併せ持っているタイプの子・人が存在しますが、ここではHSC・HSPの特徴について記し、HSS・HNSの特徴については触れていません。

 

①すぐにびっくりするなど、刺激に対して敏感である。細かいことに気がつく(些細な刺激や情報でも感知する) 

②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒されると、ふだんの力を発揮することができなかったり、人より早く疲労を感じてしまったりする。人の集まる場所や騒がしいところが苦手である。誰かの大声や、誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にしたりするだけでつらい。

③目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。そのため、行動するのに時間がかかったり、新しいことや初対面の人と関わることを躊躇したり、慣れた環境や状況が変わることを嫌がる傾向にある。急に予定が変わったときや突発的な出来事に対して混乱してしまいやすい。新しい刺激や変化を好まないのは、“刺激への馴れが生じにくいこと”の影響も大きい。

④人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。

⑤自分と他人との間を隔てる「境界」が薄いことが多く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。

⑥直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。モラルや秩序を大事にする。正義感が強い。不公平なことや、強要されることを嫌う。

⑦内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ。想像性・芸術性に優れている。クリエイティブ(創造的)な仕事に向いている。

⑧静かに遊ぶことを好む。1対1や少人数で話をするのを好む。自分が交流を深めたい相手を選び、その相手と同じことを共有し、深いところでつながって共感し合えるようなコミュニケーションを好む傾向にある。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。自分のペースで思索・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。観察されたり、評価されたり、急かされたり、競争させられたりすることを嫌う傾向にある。

⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかったりした場合に自信を失いやすい。

⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…HSCの場合「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすい。細かいことに気がついたり、些細な刺激にも敏感に反応したり、過剰に刺激や情報を受け止めたりするため、学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。

 

【最終回】

「決断」幼稚園を辞めよう。

本を読み、子どもが学校へ行くかどうかは強制ではないことがわかりました。

子どもの学ぶ権利は、学ぶ場と学ぶ方法を選択する自由を含んでいる。

子どもにとって何が最善であるかを、親が子どもとともに考えて、選択すべき。

『子どもはじゅうぶん家庭で育つ』より

 

たけるにとって何が最善であるか。

親も子も、それはもうわかっていて、それでも何度もお互いの意志を確認し合い、

そしてその意志は一致して変わらないことを確認しました。

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幼稚園を辞めよう。

そして、小学校という、誰もが通らなければならないと思っていた道から外れる選択をしよう。

自分たちで選んだ生き方に、自分たちで責任を持って生きて行こう。

 

家族で、そう決断したのでした。

  

先生へ

担任の先生と園長先生に、幼稚園を辞める決断と、その経緯について、手紙に記しました。

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f:id:kokokaku:20180128174022j:plain「先生。やはりたけるの意欲は戻らず、家族で話し合いをしました。

このまま何日も休んだり、早退したり、意欲が戻らないたけるをサポートしながらなんとか通園させ続けるより、この先は家で責任を持って親が育てることが、一番ベストな選択だと判断したのです。

何とか適応させたいと思うことで、親の私がたけるに対して否定的な気持ちや反応になってしまうのも誤魔化せない事実で、残念なことだと思ったのです」

f:id:kokokaku:20180103083236j:plain「そうだったのですか。園児たちからも、時々たけるくんのことで質問を受けるようになってはいたのです」

f:id:kokokaku:20180128174022j:plain「やっぱり。他の子の心にも影響を与え続けるのは避けたいとも思いました。

今回の決断までのいきさつとこれからのことについて、先生と園長先生にお手紙を書いてきましたのでご覧いただけますか?」

f:id:kokokaku:20171201195001j:plain「わかりました。ありがとうございます」

 

幼稚園からの除籍

後日、(小学校校長兼幼稚園)園長先生と面談をしました。

面談の席にはたけるも一緒です。

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園長先生は、手紙の内容を十分に理解して下さり、『幼稚園は義務教育ではないので、除籍というかたちになります』と説明して下さいました。

そして、小学校に入学しないことについては、

・出席はしなくても、籍は置かれること。

・席やロッカーは準備するかしないか、名簿に名前を載せるか。

・教科書は必ず受け取る必要があるが、受け渡しはどうするか。

・特定の教科や行事などへの参加だけでも歓迎するが、知らせは必要かどうか。

などの意思確認をしました。

 

園長先生のご配慮もとても有り難かったのですが、教科書を受け取りに行く以外は参加することはないと話し合ったことをお伝えしました。

行くなら行く、行かないなら行かないで、はっきりした方がお互いに良いと思ったからです。

 

何かがきっかけになってたけるが「学校へ行く」と言い出すことも無きにしも非ずで先のことはわからない。

どちらにしても、その時にどういう選択をしていくべきかについてじっくり話し合って、そこで結論を出したことに責任を持って行動していきたい。

そして、たけるの内発的な好奇心に基づいて、自発的な意志と主体性を保障しながら精神的な自立を育み、それを見守っていきたい。

それが正直な気持ちです。

 

さようなら、幼稚園

 

園長先生との面談の後、挨拶と、荷物を取りに園舎へ向かいます。

 

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子どもたちの声が聴こえます。

 

何だか懐かしくさえ感じる・・・。

 

10か月前の9月、入園を意識し始めて見学に来た園舎。

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入園を前に、集団に馴染めるようにと参加した、支援センターでの保育園児との交流保育では、たけるの心が折れてしまったんだよね。

この時、たけるの敏感・繊細さや、集団行動の苦手さを改めて認識した。

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ママと離れては幼稚園には絶対行かないと言うたける。

慣れるまでママも一緒に幼稚園に通うことを約束したのはこの頃だった。

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入園に向けての準備では、ママと離れてパパとお出かけもした。

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そして入園式

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一生懸命みんなに合わせていたけれど、

耐えきれなくなってたけるは振り返った。

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周りの目や、「過保護」と思われるのが嫌だという怖れを振り切って、

無我夢中でたけるに寄り添い、背中をさすり続けた。

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それからたけるは少しづつ、少しづつ、自分の方法とペースを尊重してもらいながら、先生に信頼を寄せるようになり、園生活に慣れていった。

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園生活がとても楽しくなって、ママ離れも少しづつ進んだ。

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そしてとうとう、5月の終わりごろ、ママがおうちに帰っても大丈夫になった。

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でも、運動会。

慣れた園舎で、大好きな先生と、お友達だけでの練習は、最初は本当に本当に楽しかったけれど、小学校合同の全体練習に入ると、たけるは一気に元気をなくし、本番1週間前に熱を出した。

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運動会本番。

やれるだけのことはやった。f:id:kokokaku:20180116131106j:plain

結果、運動会を終えたたけるには元気も笑顔も戻らなかった。

そして、幼稚園に行かなくなった。

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良いことも嫌なことも、合わせられるものも合わせられないものも、体験してみてわかったんだよね。

たけるの育ちはこの方法じゃなくて良いって。

普通と違って良いって。

たけるに笑顔が戻らないのは、笑顔になれる違う道を探して、自分たちらしく生きて行こう!というサインなんだ。

 

みんな精一杯頑張った!

 

頑張ってみて、本当に良かった!! 

 

 

 

お別れの時。

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たけるもみんなも何度も何度も大きな声で、

「バイバーイ、バイバーイ」

「バイバーイ、たけるくん、バイバーイ」

と笑顔で手を振り合います。

車に乗って、動き出して、お互いが見えなくなるまでずっと。

 

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ありがとう、さようなら、幼稚園。

 

 終わり

 

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(*この物語は、実話をもとにしていますが、個人名や団体名、エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)

 

エピローグ

わが子が幼稚園を辞める?学校へ行かない?

そんな選択をする日がくるなど、夢にも思いませんでした。

 

でも、私たちが授かったのはたけるです。

 

たけるは、2歳か3歳の頃、お風呂に入りながら私に教えてくれました。

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f:id:kokokaku:20180128175456j:plain「たけるはパパとママのところにきたくて生まれてきたの?」

f:id:kokokaku:20180128175557j:plain「違うよ、神様がパパとママのところが良いって言ったんだよ」

f:id:kokokaku:20180128175619j:plain「え!?自分で選んでくるんじゃないの?」

f:id:kokokaku:20180128175557j:plain「うん。神様と決めた」

f:id:kokokaku:20180128175619j:plain「え~、びっくり。たけるは何のために生まれてきたのかなぁ。

神様何か言ってた?」

f:id:kokokaku:20180128175557j:plain「パパとママに教えること」

f:id:kokokaku:20180128175456j:plain「そうなんだ、すごーい。

たけるは本当にパパとママにいっぱい教えてくれてるもんね」

 

子どもはママを選んで生まれてくるものだと思い込んでいた自分の認識や想像との違いに驚いたけれど、私も夫もそれを信じました。

たけるの感受性の豊かさ、鋭さは人一倍だというのはわかっていたし、

ママがマイナスの感情を閉じ込めてしまうと、たけるがそれをキャッチして、怪我したり、嘔吐や熱など体調に表れたり…それがはっきりと連動してしまうので、ママは自分らしく生きられていないという問題を隠せなくなっていたからです。

たけるの態度や反応にはすべて、私が『本当の私』になるためのメッセージが含まれている・・・。

いつしか、

「私が殻を破り、本当の自分らしい自分を取り戻さなければ、この家族には本物の幸せはこない」

そう感じ、「生きることに真剣になろう」と思うようになりました。

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そうして、たけるの幼稚園入園を通して、私はまさに、今までやったことのない方法で殻を破る体験を繰り返してきたのだなと改めて思います。

そこには、

・自分の本当の気持ち、ニーズに気づく

・自分の気持ち、ニーズを適切に表現する

・質問する

・交渉する(協力や理解、必要なケアを依頼する)

嫌だと思ったことには『No』と言う

 

といったスキルが必要でした。

それは、周りや相手ばかりを優先し、自分をないがしろにしてきた私に身についていなかったスキルであり、

たけるとのギャップの大きい社会のペースや価値観の中で、たけるの気質を尊重し、守るべき時に守るためには無くてはならないスキルだったのです。

親の私に独自のアイデンティティーや自己肯定感が育っておらず、精神的に自立できていないのだから、子どもを自立させようとするより、まずは自分が育たないとダメだな…と何度も思ったことを覚えています。

たけるも、今は家庭という場で成長していく中で、これらのスキルをしっかり身につけていくことで自分を守るシールドが強化され、自分のペースで自分らしい人生を開拓していくのだろうと思います。

 

幼稚園入園という体験は、その只中にいる時は無我夢中だったけれど、私たちそれぞれの人生に欠かせない一幕だったのでした。

 

決断を後押ししたもの

たけるが入園した幼稚園は、少人数で、担任の先生も、園長先生も、また他の先生方も温かく見守ってくれる、非常に恵まれた環境でした。 

だからこそ、潔く判断することができました。

こんなに恵まれていても、先生と信頼関係が築けていても、ママのサポートがあったとしてもダメなものはダメ。

それがわかったから。

 

通常の幼稚園とは違って、幼・小学校として隣接し合い、小学校という環境をいち早く身近で感じられたのも、私たち家族にとっては幸運だったのかもしれません。

 

集団の中で養われるものもあるけれど、たけるにとっては、それ以上に失うものも大きく、気質に合った選択ができることをいち早く知ることができたからです。

   

さいごに

子どもには、生まれ持った独自の気質が存在しています。

またその子の気質に備わった発達のペース、そして自立していくタイミングもそれぞれ独自のものがあります。

その生まれ持った独自の気質が、その子の個性として花開くかどうかは、その子に与えられた環境の影響が特に大きいと考えます。

どんな気質や個性でも、それぞれのペースやタイミングに配慮した選択肢の幅が拡げられて、それぞれの気質に合った育ち方の選択が尊ばれる世の中になることを願っています。

また、希望を持って気質に合った育ちの選択をされる方々とつながっていけたらいいなと思います。

 

2017年11月にスタートした連載『幼稚園入園をめぐる家族の物語』。

最後までお読みくださり、温かく見守って下さり、応援や励ましをいただき、

本当にありがとうございました。

 

kokokaku

 

 

ー著書紹介ー

~幼かったあの日の私を抱きしめに行こう。

本当の私(ママ)になるために。~

というキャッチコピーの本、『ママ、怒らないで。』を出版しています。

ママ、怒らないで。不機嫌なしつけの連鎖がおよぼす病

ママ、怒らないで。不機嫌なしつけの連鎖がおよぼす病